実際に起きた生活保護をめぐる事件をモチーフに描き、10月10日(金)より2週間限定の予定で公開されていた映画『スノードロップ』が、鑑賞後の熱い感想と口コミの広まりを受け、再々延長上映が決定。今回は2度目の延長となり、公開から4週目に突入するロングラン上映となっている。
本作は、生活保護制度を通じ、福祉の在り方も描いたヒューマン・ドラマで、2016年に実際に起きた事件がモチーフとなっている。
その背景もあり、福祉・介護(ケースワーカー、ケアマネージャー、生活保護認定者、福祉を学ぶ方々、など)の仕事に携わる観客の来場が非常に多く、当事者として映画に深く共鳴した声が日々積み重なっている。
共鳴している理由としては、福祉関係者たちが忙しく働く日常がきちんと描かれていることが大きく、ケースワーカーの残念な事件の報道が相次ぎ、よくない印象の映画やドラマがつくられることも多々あるなかで、本作は地道にまじめに働くケースワーカーの方々へ吉田浩太監督が細部にわたり取材し脚本を作り上げている。
また、ケースワーカー役のキャスト(イトウハルヒ)も自宅訪問の様子などを演じるにあたり実際にどうなのかを聞き取りして演じており、自分たちのいまを振り返るきっかけになったことも大きいよう。
生活保護の受給者たちにどんなに寄り添っていたとしても、本作の基になったような事件が起きることもあり、ケースワーカーたちの心の在り方にも踏み込み、納得の共感を広く得ている模様だ。
この福祉従事者の支持が本作の現在の動員を大きく支えており、作品の広がりの中心になっている。そのほか実際に過去に生活保護を受給した経験のある方も訪れ、上映後にはキャストや監督に涙ながらに思いを伝える観客もいるという。
劇場ロビーには観客が感想を書ける「感想ポストイット」を設置。そこには福祉の現場に携わる方の生の声が色濃く反映されている。
本作を求める声が絶えることなく寄せられ、“観客が上映を延ばしている映画” “福祉に携わる人にとって観ておくべき映画”として話題になっており、同時に、主演の西原亜希、相対するケースワーカー役のイトウハルヒはじめ、キャストたちの演技力にも評価が集まっている。
<観客の感想ポストイット>
「何が正解かは支援者には分からない。
けれど、その人にとっての幸せを一緒に考え、それに寄り添うことはできる。
そんな支援者でいたいと思いました。すべての福祉関係者に見てほしい映画です。」
「すばらしい映画でした。
ひとりでも多くの人に見てもらいたいです。特に国会議員が見なくてはダメです。
世の中のすべてのことに通じる問題です。この映画を作った人すべてに感謝します。」
「『生活保護は国民の権利です』という言葉でも救われない命がある。
それでもみじめに思えてしまう。
介護で閉じ込められてと周りは思うが、それが自分の尊厳になっている人もいる。
人の心の難しさを学びました。そこを忘れずに働こうと思います。 ―― ケアマネージャー」
また、内藤剛志(俳優)は本作について「『慰めすら、みじめに感じる』この言葉が心に突き刺さる。西原亜希の背中に宿るのは、声なき叫びだ。『気づけるか?助けてと言えない声に!』それは僕への、そしてあなたへの、容赦ない問いかけだ。遠くではない。すぐ隣にあるかもしれない現実を突きつけられる映画だ」とコメント。本作のトークイベントに参加し、熱く語ったことも。
さらに加藤ローサ(俳優)は「このどうしようもなさに向き合わざるを得ない感覚が、観終わった後もジワジワと続く」と語り、徳永えり(俳優)は「自分を、他者を"救う"ということがどういうことか、深く考えなければいけないと思った。この作品を綺麗な言葉ではまとめられない」とコメントを寄せるなど、著名人からの反響も相次いでいる。
本作は、生活保護制度を受給することに対して根本的な矛盾の選択をした、ある実在した一家をモデルとした物語。
監督は、自身の生活保護受給経験から顧みてこの一家の在り方に大きな疑問を抱き、映画化を熱望した映画『Sexual Drive』の吉田浩太。
キャストは忖度のない純粋な演技力のみで選別されるオーディションを開催し、主演には今作が映画初主演となる西原亜希、助演には若手注目俳優のイトウハルヒ。2人の繊細かつ感受性豊かな演技で、緊張感ある生活保護受給へのやり取りを見事に演じ切った。生活保護受給への一家の根本的な矛盾の選択は、観る者の固定概念を覆し、現代に通底する貧困意識を問いただす。
『スノードロップ』は11月6日(木)まで新宿武蔵野館ほか、全国にて順次公開中。
シネマカフェ編集部


